転職面接では、作られた「キャリアアップストーリー」が破綻するのは、あっという間です。ここでつまずいてしまうと、挽回はまず不可能に近いです。
みえみえのウソをつく、というのは人間の根本的資質を問われることになるからです。だから転職の面接では絶対にウソをついてはいけません。
ここで助け船を出してくれる優しい面接官もいますが、でも、想定問答しか用意していない人は、船から自分で飛び降りてしまいます。
面接官:「いまの職場でマネジャーになるのと、当社でなるのでは何が違うのですか?、ほかにも何か、転職しなければならない事情があるのではありませんか?」
緊張する転職面接の場でこんな「想定外」のことを言われると、頭が真っ白になり、ウソから一転、ホンネ丸出しになってしまいます。
「実は今の会社は4月に経営陣が変わったことで事業方針も大幅に変わり、業績が低迷し始め職員の不足もあってサービス残業が異常に多いのです。将来がとても不安です。そして患者さんからもクレームが増えており、職員のモラルが下がってしまっています。それに対し上層部は親組織からの出向で当事者意識もなくのんびりしていて、どうにもこのまま働くことに不安を感じています」
本来、原因となる不満は「業績悪化への不安」だけなのに、それまでウソをついていた反動が出て、なんとか自分を理解してもらおうと不満の大噴火状態に。こうなるともう、助け船を出してくれる面接官はいません。
このエピソードからわかることがもう一つあります。「ウソ」は自分の首を絞めるが、かといって「ありのままの自分」をそのままさらけ出すことが良いわけではない、ということです。
別ページでお話した「転職活動はビジネスだ」という話にもつながります。ビジネスでウソはタブーですが、すべて本当のことを伝えるバカ正直な人が有能なわけではありません。そのあたり、社会人のあなたなら肌で感じていらっしゃるのではないでしょうか。
「ウソ」も「バカ正直」もダメ。では、何が大切なのでしょうか。
答えは「一貫性」です。
転職面接での想定問答の落とし穴は、まさにここにあります。模範解答を覚えるやり方だと、質問相互のつながりについて意識がいたらず、それぞれの質問に対してバラバラに受けを狙ってしまいます。そしていつのまにか、回答に一貫性がなくなってしまうのです。
転職面接で出される質問は相互につながっていて、一貫性がなくなることは転職面接では致命的です。一見、圧迫的な面接にみえるような場面も、ほとんどは論理の整合性や一貫性を確認しているにすぎないことのほうが多いのです。
一貫性がいかに心強い味方となるか、あなたは本番の転職面接で、必ず痛感するはずです。