転職・再就職の面接で、相対する面接官の正体について知っていただきましょう。

面接はお見合いのようなものですが、相手のことを何も知らずにお見合いにのぞむ人はいませんよね。そんなの恐ろしくて、とても会いにいけませんよね。ところが面接では、相手となる面接官のことを何も知らずに挑んでしまう人が案外多いものです。

当然ですが、知らないよりは知っているほうが、対策も立てやすいし有利です。そして実は、新卒面接と転職面接の最も異なる部分は、面接官側の考え方なのです。

転職面接を受けるに当たり、面接官が何者かを知っているか知らないかが、大きな差を生むことをご理解いただきたいと思います。

転職面接にのぞむ方が犯す、大いなる勘違いがあります。それは「面接官は面接のプロだ」という先入観をもってしまっていることです。

結論から言うと、転職面接の面接官は、現場の仕事や経営のプロですが、面接者としてはほぼ素人です。そもそも、中途採用の面接にはプロはいないともいえます。

そんなの信じられない! という方のために、現実をお話します。。

面接官が実際に面接中に記入する「面接評定票」の一例ですが、実は、転職希望者に質問する項目はほんの10項目くらいしかないんです。

●専門スキルの適合性
・テクニカルスキル業務知識
・コミュニケーション能力、表現力、協調性など
・リーダー特性、マネジメント特性
・論理的思考、課題解決力など
●ビジョン・考え方
・仕事観、やりたいことはハッキリしているか
・考え方は前向きか

・しっかりした自分の考え方を持っているか
●意欲行動力
・学習、成長意欲
・積極性など
●粘り強さ、タフネスさ
・ストレス耐性など
●当組織との相性
●当組織に対する関心と理解度
・加入意欲、加入できる時期

「ずいぶんいい加減だな」と思いましたか? でもこれが真実なのです。

専門用語など一つも書かれていません。むしろ、主観的な感想が羅列されています。そしてこの「いい加減」な傾向は、新卒面接より、転職面接のほうが顕著です。

中途採用の面接が新卒面接と大きく異なるのは、人事部だけではなく募集部門のマネジャーが直接面接を実施するという点です。そして中途の場合は、採否の主導権も基本的に現場にあります。現場がNOと言えばおしまいです。

ここが明らかに、新卒面接とは異なります。

現場のマネジャーは本来、面接が仕事ではありません。みなさんと同じく日頃は忙しく自分の仕事をしています。そして、ここがポイントなのですが、現場のマネジャーは面接者としての専門教育をほとんど受けていません。せいぜいセクシャルハラスメントや就職差別につながるような「禁止事項」のレクチャーを受ける程度です。

転職コンサルタントにとっても、面接官は仕事のカウンターパートです。転職コンサルタントは、はたして実態がどの程度のものなのか気になって、リクルートエージェントのメールマガジンを購読されていた人事の方にアンケートをとってみたそうです。

回答者の95.3%が、中途採用の面接官として、現場担当者への教育は実施していませんでした。転職中途採用の面接においては、現場マネジャーが独自の判断で採否を決定しているのが実情なのです。

「おれは人を見る目には自信がある、1分話をすればだいたい分かるね」と自慢する企業の社長さんもいれば、初めて面接を体験する調剤薬局の局長さんからは、面接前に不安な面持ちで「どんなことを聞けばいいのか教えてほしい」とアドバイスを求められたこともあるそうです。

自信があろうとなかろうと、共通するのは「面接の素人」であるという点です。

つまり転職で中途採用の面接の実態は、よくも悪くも一人の生身の人間が、面接の専門的なノウハウも持たないままに、1時間ほど対話をして採否を決める・・・という、そんな場なのです。

■転職面接官は独断偏見なんでもあり

プロと素人の面接官としての違いはなんだと思いますか。

一言でいえば、マシンのようになれるのがプロで、人間らしさ丸出しなのが素人です。面接のプロとはその組織、その部門で求められる職務遂行力を絶対レベルで把握し、転職応募者を客観的かつ科学的にチェックできるような人のことです。

そこでは「人間」が犯してしまいがちな判断エラーの原因を排除することを学びます。素人は、まさにその逆です。人間らしく、判断エラーを当たり前のようにします。

判断エラーを犯す面接官は、大きく五つに分けることができます。

①先入観型
②圧迫型
③リスク回避型
④好き嫌い重視型
⑤比較検討型

解説です。

①先入観型は、自分の経験に則った先入観、偏見を捨てられないタイプです。「○○商事の人はプロジェクトリーダーとか言ってくるけど、結局下請けにマル投げしていてスケジュール調整くらいしかできないんだよな」

こうした偏見をあらかじめ抱き、最初から応募者を色眼鏡で見ます。

②圧迫型は、面接官である自分に酔ってしまうタイプです。スタンフォード大学で行われた実験に基づいた、『es』という映画があります。それぞれ囚人と看守という役割を与えられた人たちが、どう変わっていくかという実験なのですが、演じているうちに囚人は囚人らしく、看守は看守らしくなっていきます。囚人は看守に反発しながらも権力に卑屈になり、看守は囚人の反発を嫌ってより官僚的になっていく・・。

まさにこの実験で見られる現象が、にわか面接官にも起こるのです。

「こっちは採ってやる強い立場なんだ」と思うことで、内面までサディスティックになり、圧迫面接に走るのです。圧迫面接はプロがやるとちゃんと意味があるのですが、こうした素人のサディスティックな圧迫面接は、ただのイジメです。パワハラと言ってもいいかもしれません。いずれにせよ、転職応募者にとっては当たりたくない面接官です。

③リスク回避型は、ワンマン社長のいる会社や企業で頻発します。サラリーマンには、なるべくリスクを回避する、という習性が身についている人が多いものです。その結果、「社長はこの応募者のことをどう思うだろうか」という視点だけの面接になるのです。

そうすると、良いところを発掘しようとする視線ではなく、不良品は見逃さないぞという検品担当者のような視線になってしまいます。

④好き嫌い重視型は、読んで字のごとくです。論理的根拠もなく、「なんとなく気に入らないから不採用」と早々と決めてしまいます。

その人がとんでもない目利きだったら、それも許されるのかもしれません。でもほとんどの場合、そうではないでしょう。

このタイプの人は、面接中の質問も熱心ではありません。「第一印象はそれほど良くないけれどキラリと光るものがある」という人材は、こういう面接官だと採ることはできません。

⑤比較検討型は、面接官の資質というより、システムの問題です。同じ日に複数の応募者の面接を行うと、どうしても比較して良く見えるほうを選んでしまうものです。

一日の採用数が決まっているという場合は、それでもいいでしょう。ただ、絶対評価で応募者を判断すべき場合は、これも判断エラーの原因となります。その日の顔ぶれによって採否が決まってしまうのは、応募者にとっては不幸なことです。

こうして見てくると、独断偏見なんでもありの世界です。そして、それはあながち、間違っているともいえません。なぜなら配属部門が決まっていることの多い中途採用面接は、その部署のマネジャーと仕事をするパートナー選びのようなものです。
だから相性とか好き嫌いを持ち込むことも重要なことであり、それで判断されても仕方がないことなのです。

■誰もが嫌う事に注意

面接はあくまでも人間同士のやることです。しかも転職中途採用の場合は、面接の素人が1時間くらいかけて「いっしょに働く気になるか」を見極めようとするので、当然、すべてが合理的に進むはずはありません。

転職希望者にとってのポイントは、こうした前提を把握しているかどうかにあります。

転職面接は、専門的で科学的な能力チェックが行われる場所ではない。だからこそ、自分か抱かれそうな先入観を意識したり、第一印象をきちんとするよう努めたりすることに意味が出てきます。

誤解しないでほしいのですが、面接官に迎合しろと言っているのではありません。相手がどう思おうと、譲れない一線は破る必要はありません。ただ、自分にとってはどうでもいいことで、面接に失敗するのはバカバカしい、と言いたいのです。そうした事態を未然に防ぐために、簡単に排除できるリスク要因は排除しておく必要があるわけです。

ビクビクしたり、とりつくろったりすることは無用です。まずは基本的なビジネスマナーが守られていたら大丈夫なのですが、なかなかそれができない人が少なくないのです。

不採用の理由」の中に、些細だけれど致命的なものがありましたね。

それらはしっかり覚えて注意して面接にのぞんでください。

転職・再就職の面接では、こういった現実も知っておくと、心の準備や対策もしやすくなりますよね。




 

転職面接官はプロ、というのは勘違い」の解説ページです。


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