自己紹介PRは、CAN(経験したこと・できること)の証明なのですが、実はCANだけでは自己PRとしては不十分です。

たとえば転職面接のやり取りで、こんな実例があります。

絶大な人気を誇るドラッグストアのチェーン店で、薬剤師のチームリーダーをされてこられたある女性が、大手調剤薬局に転職される際、実務で培ったことには触れずにビジネススクールで学んだ知識ばかりをアピールされていました。これは実にもったいないことです。

転職先の仕事と現在の仕事をうまく結びつけることができず、ビジネススクールで学んだ知識を披露するのがもっとも安全で確実だと思われたのでしょう。

しかしこれは、面接官にとっては退屈きわまりない自己PRになってしまいます。

転職先の仕事と現在の仕事が直接結びつく必要がないことは、このサイトを全部読まれた方ならおわかりだと思います。書類選考を通過している以上は、「キャリア不足」で落ちることはありません。面接官側は、「キャリア不足」を承知の上で呼んでいるわけです。

では面接官は、彼女の自己PRから何を感じ取りたいのでしょうか。

それは、未来価値(WILL)です。

だれもが仕事を通して成長し、進化しています。ただそれが自分自身でもよく理解できていない人が多いだけです。

面接で職務遂行能力をアピールする上で重要なポイントは、「○○な能力が求められるだろう」と予想して丸暗記することではなく、自分のなかにある「やる気=主体的な行動意欲」を思い出して語れるようにすることなのです。それがあなたの未来価値です。あなたにはぜひ、自分のなかに眠っているお宝を探してもらいたいと思います。

自己紹介PRは確かに自分の過去の経験(CAN)からスタートするのですが、そのたどり着くゴールは未来価値(WILL)であることを覚えておいてください。

■「覚える」より「思い出す」ことが大切

面接官に自分の未来価値を伝えるためには、言葉をあれこれ尽くすより、エピソードで証明するのがいちばんの近道です。それもできるだけ具体的なほうがよいです。

あなたが面接官になったつもりで次の回答例を読んでみてください。

Q:「仕事を進めるうえで気をつけていたことはなんですか」

A1:「誰よりもお客様の立場に立って、仕事に取り組んでまいりました」

A2:「お客様から、説明がわかりやすかったというお言葉を一日に何回いただけるか。その回数を記録し、数字が増えていくのを励みに仕事に取り組んでまいりました」

さて、いかがでしょう。どちらの答えのほうが未来価値を感じるでしょうか。

2番ですね。なぜなら2番のほうがより具体的に感じるからです。ではなぜ具体的に感じたのでしょうか。大きな違いは一つ。行動で語っているか否かです。

1番の答えは、「頭の中の考え」にすぎないのですが、2番は「具体的な過去の行動」で話しているから、説得力が増すのです。

職務経歴書の自己紹介PR欄には次のような言葉がよく並びます。「相手の立場を意識した行動」「コミュニケーション能力」「体力」「協調性」「信頼関係」「粘り強さ」こういった能力はぜひ、伝えたいところですが、ただそれをそのまま言葉で話しても相手には伝わらないどころか、逆にウソっぽく見えてしまうこともあります。

普段、何かを判断する上でいちばん必要な情報は、FACT(ファクト)とよばれる『客観的事実』です。

たとえば、軽くて強いライターを売り込もうと思った時に「とても軽くて強いライターなので買ってください」と見ず知らずの人からもちかけられても信用できませんね。こんな時に考えるセールストークはFACT集めです。

「素材はチタニウムのTSI14で1万回の着火試験を行ってもまったく問題ありません。性能が評価されて米国空軍での採用が決まりました。それでいて、手に持った感触はマシュマロのように軽いんです。」というようなことを聞いているうちに、本当に軽くて強そうだ、と認識を持つようになります。

転職面接もある意味では、「自分という商品の性能」をアピールする場面です。そのためにはできるだけ今までの実体験、つまりエピソードを思い出してメモしておき、エピソードで語ることが、自分の能力を証明するうえでとても重要になるのです。エピソードで語ると、その人の職場での行動場面が想像しやすくなります。なぜなら、自分の能力を「使っている」姿が画像で浮かんでくるからです。

言っていることはすごく良いことなんだけれども、なんとなくピンとこない・・・。転職面接の現場では、面接官のこうしたつぶやきはよく聞こえてきます。

この原因のほとんどが、カッコ良い考え方や理論を転職応募者が覚えてきて、エピソードなき熱弁を振るってしまうことに起因しているのです。

また、「継続はチカラなり」という言葉があります。世の中で求められる能力は、ひらめきのような瞬発力は実はごくわずかで、むしろ「継続的に実行できる」ことのほうが重視されます。自分の強みをPRする際も、耳ざわりのよい壮大な能力を語るよりも、地味だけれど習慣になっている能力を伝えるほうが、はるかに説得力が増します。

借りてきたPRを「覚える」より、自分のなかのPRできる部分を「思い出す」ことが大切なのです。たとえば、「同僚との信頼関係を築くうえで、話をじっくり聞くことが大事」ということをどう実践しているか伝えたいとします。

「積極的なコミュニケーションが重要です」

という抽象的な考えを繰り返すより、

「話を聞く時にわたしは、必ず手をとめて、全身をその人に向き合わせて聞くようにしています。些細なことですが、これでずいぶん話しやすい雰囲気を作ることができます」

そして、なぜそんな行動が習慣になったか、ということをさらに思い起こすと、自分がされて嫌だったことや、失敗して痛い目にあったことがキッカケになっていたりします。

こうやって自分の考えや能力を語る際には、単に経歴や模範解答を覚えるよりも、根拠となるエピソードを具体的に思い出しておくことが重要なのです。

■「成功した」と言える根拠を発掘する・無ければ作る!

自分の能力を伝える時に「お客様の立場に立って、お客様に喜んでいただけるように常に心がけてきました」というような言葉がよく出てきます。

でもこれだけでは、本当にそんな応対や接客をしてきたかどうかはわかりません。なぜなら、お店などで接客した経験がない私でも簡単に言えてしまうからです。「心がけ」とか「考え」は、どうしても一般論になりがちです。

あなたの応対がお客様に喜んでいただけているかどうかを、どうやって自分で検証していたか、この部分がないと「心がけ」という漠然としたもので終わってしまうからです。ここはきちんと行動を思い出しておき、「心がけ⇒行動」で話せるようにしておきましょう。

先ほどの応対の場合、

「お見送りをした際に振り返っていただいたり、薬局に来られた時に名前で呼んでいただいたりすることを目標に、日々の接客に努めておりました」

というように、具体的な行動が見える言葉で伝えるのです。

「振り返ってくださったお客様は、その後ほぼ100%再訪いただけました。だいたい3回来てくださったお客様は、私の名前で呼んでくださるようになりました」

というように、成功したと言える根拠も発掘しておけばなお良いでしょう。

そして、もし過去にそういうエピソードがなかったならば、現在の職場で意識的に作れば良いのです。転職するまでの間、わずかな期間でもそれは作ることができます。

さて、面接する側が、その転職応募者が主体性ある仕事をしてきたかどうかを見分けるために確かめるポイントがあります。それは、仕事のことを細かく覚えているかどうかです。

やらされ仕事しかしてこなかった「指示待ち人間」は、あまり今までの仕事のことをしゃべりたがらないし、覚えていなかったりします。逆に自分の意思で主体的に仕事をやってきた人は、ウザイくらい細かく覚えておられ、良く話します。

もちろん「こんな業績をあげてきました!」という実績ばかりアピールするのではなく、「業績をあげられたのは、こういう理由があったからです」とか「業績をあげたことで得た経験で、こんなことを応募先のこの会社でも活かせると思っています。なぜならば・・・」という具合です。

こういう人は、たいてい仕事中の笑えるエピソードも一つや二つ持っているものです。面接の場が温まってくると、そうした笑い話も織り交ぜて、面接官と和やかムードで談笑となります。これはもう、勝ったも同然でしょう。転職成功です!




 

転職面接の自己アピールの内容と話し方」の解説ページです。


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